感想文ブログ

作品をもう観たという方に、私の個人的な解釈を伝える為の内容を溜めます。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察6

ギロチンカッター
[原作 013章(213P~226P)]

 

二度目のバトルを終え、次の対戦相手ギロチンカッターへの対策を講じる怪異殺しチーム。掴みどころのない相手に警戒を強める。そして前回の対戦で被害を受けた羽川と会う暦。これ以上は危険という判断をくだした暦の言葉を受け、新学期にまた会おうという約束をし、いよいよ最後のバトルという時、緊急事態に見舞われる。

 

VS ギロチンカッター。忍野の「人間であることを諦めろ」に続く内容が表現されていないため、結末に至るまでの作戦を忍野が考えたこと、リスキーな賭けの側面があったことなど、面白味ともいえる部分がないのがとても残念であり、この台詞から帰結する部分は解っても、そこまでの経緯がなく突拍子無いといった具合に受け止められかねないと思いました。
「お前、それでも人間か」という暦の問いにも笑いで答えますが、「いいえ。僕は神です」と言い放つ姿も残してほしかったです。
ギロチンカッター戦は総じてギロチンカッターとの会話カットが多く感じられ、ギロチンカッターが人間であるにもかかわらず、常軌を逸した存在である事、及び吸血鬼ハンターの中での駆け引きがそれまでにあったこと等、物語の深みに触れる雑談がなくなっているのは、これまでのシリーズを通じてもかなり勿体なく思う点であります。諸々の内の一つ、「神、つまり僕はこう仰っています」という台詞のイカレっぷりなど見所が沢山あったのですが。

 

高らかに哄笑するギロチンカッター。油断する相手に対し暦が繰り出す作戦、自身を変形させること。
カットされた中の話になりますが、肉体を霧にも変えられない暦を嘲笑うような一幕が、その油断を誘った一因ともなっています。ドラマツルギーの大剣にも構想のヒントを得た上での作戦ではありますが、あまりにも強大な力を持って、ギロチンカッターに圧勝を収めます。

 

「これはもう確かに、人間じゃない」
「人間を捨てている」
「僕はもう、化物なのだから。」

 

この後に繰り広げられる羽川とのやり取りがカットされているのは、三部作の二作目ラストシーンとしては最良の選択だと思います。
カットしていなければ、ここでもう一度空気が緩む事になってしまいますから。

そんな事を思っていたら次回予告の最後の最後で「阿良々木くん、どうか私のノーブラおっぱいをモミモミしてください」が入ってしまいお終い。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察5

○聖人
[原作 012章(194P~213P)]

 

二度目のバトルを終え、次の対戦相手ギロチンカッターへの対策を講じる怪異殺しチーム。掴みどころのない相手に警戒を強める。そして前回の対戦で被害を受けた羽川と会う暦。これ以上は危険という判断をくだした暦の言葉を受け、新学期にまた会おうという約束をし、いよいよ最後のバトルという時、緊急事態に見舞われる。

 

4/5。左脚を取り戻し約17歳ほどの肉体に成長。吸血鬼としてのスキルを失いつつも不死力はほぼ回復。
暦とキスショットがベンチで繰り広げる会話の様子は、力が抜けたような座り方や話の雰囲気など、お互いかなり仲良くなっているような印象を受けます。暦が言うギロチンカッターへの所感を聞いているキスショットの表情など、かなりリラックスしているように見受けられます。
ここでのギロチンカッターの人間だという箇所に入る回想で、ギロチンカッターから伸びている影のシーンが重なりより強調された表現になっています。
両腕を奪ったギロチンカッター傷物語での敵キャラとされる三人の吸血鬼ハンター、その名前に含まれている刃物の数で、キスショットから奪った四肢が割り振られているのかと思います。
ドラマツルギー(剣)。エピソード(ソード)。ギロチンカッター(ギロチン、カッター)。

 

キスショットの会話シーンと流れるように繋がって羽川と草むらで会うシーン。
ここで羽川が持参したサンドイッチ、「この一列トマトだよ?」と、吸血鬼の好物としてもあげられるトマトジュースに寄せて作ってきたことが伺える一幕ですが、確かこの台詞は原作にない部分で、より羽川の気の回る姿が強調された追加に見えます。
コカコーラのCMのようなはしゃぎ方をみせるシーンを越え、今後の伏線ともなる吸血衝動の会話と、サンドイッチを食べている羽川をみる視線が少しずつ下がっていき、生唾を飲む所作は、これまでの暦が見せて来た変態的側面の延長に有りながら、それがこの時点で少しずつ変わり始めている前触れとして、空気感もかなり違った形になっています。あの羽川ならば、気づく事もこの段階から多くあったのかもしれません。特に反応せず。ここで原作のモノローグにある「キスショットがには、今吸血衝動がないらしいと、忍野がそう言っていたけれど」がどうにか挟みこまれていれば、次作に向けて更に良いとっかかりになるのになと思いました。

羽川と一旦のお別れをするシーン。会話に入り風がゆったり吹き始め、言い合うシーンとなりまた風が止まります。「自己犠牲なんかじゃないよ」と暦の手を振り払った瞬間に草が僅かに揺れ始め、「自己満足」と言い放ったと同時に、少し強めの風が吹き抜けます。二人の間で、心からお互いを理解し始めた時に風が優しく吹いているように感じました。
「正直、引く」と言われた瞬間、羽川のストレスが著しい際に出ているであろう赤い傘のカットは切なくなります。
唐突にパンツを脱ぎ出す羽川、漫画のくだりがバッサリカットされているため、不意打ちの衝撃は原作以上です。足が見えるシーン、「いやいやいや」の前後から劇場の笑い声がそこかしこから響きます。無駄に実写チックなパンツとわざとらしい「ほわぁ~」からの流れも爆笑。
「そりゃそうだ」の後、風がまた吹き始めます。

 

シーンが学習塾跡へと黒齣の裏で響く忍野の「悪い、ミスった」、「委員長ちゃんがさらわれた」。事態が最悪な方向へと動き出している事を予感させ次のバトルへ。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察4

○エピソード
[原作 011章(168P~194P)]

 

左脚をかけた二番目のバトル、対エピソード戦。彼のヴァンパイア・ハーフとしての特性、戦術に窮しながらも、途中乱入をした羽川の力もあり勝利を収める。しかし代償に命を失いかける羽川。忍野の登場により事態は収束へと向かう。

 

4/4。VS EPISODE。短い回想を挟みつつ暦とキスショットの会話シーン。キスショットが脳の奥深くにしまい込んでしまった記憶を思い起こすため、自らのこめかみ辺りより手を突っ込んでの脳漿かき出し描写となります。原作でも暦のモノローグとして「つくづくアニメにできねぇよ。」と、メタ発言が繰り出される場面でしたが、スクリーンの大画面で目が勝手に動いてしまう凄惨に映し出され、以前からの好事家と思われる一部から感嘆の声があがります。

赤信号。ポケットに手を突っ込みながら登場する暦がエピソードと対峙。ここでの二人の会話はほぼカットされていて、暦の言葉が少ない分、勝負における心意気をより滲ませる効果を生んでいるような気がします。そんな中、残った会話の中にエピソードのキメ台詞「超ウケる」、「後遺症が残らない程度に殺してやるよ」があるのは嬉しいところ。

 

戦闘突入。作曲の神前氏がインタビューで語っていた表現を用いれば「シャバダバ」している軽快な音楽が鳴り響く中、エピソードのじっくりとした攻撃が続きます。
キリストの絵をカットインさせての台詞なき説明により、今の暦にとってその攻撃がどう意味を持つのか、端的に理解できる映像作品ならではのシーンからの、しつこい程の連続「ハハハハハ」カット。ここは意図せず笑ってしまいました。

ここで羽川の乱入によりもたらされる大惨事。内蔵の飛び出方、そのボロボロの姿は先のキスショットを軽く凌駕する程。その原因、十字架を命中させた時の無邪気なエピソードの表情がとても印象的。


意識を失うギリギリで言う羽川のヒントがカットされている分、察しがいい暦。戦闘の場をスタジアムに移し、砂の説明と共にあぶり出したエピソードに飛びかかる。首を締めあげ、殺す寸前、突如現れた忍野に止められますが、この時明確に殺す事を目的としていた暦を、そんなモノローグなど必要なく描写され息を呑みます。

多用されるヘリからの空撮カットを挟み、時系列がぶつ切りになり順序問わず繰り広げられるカットで、暦の慌てふためく感情を強烈に印象付けます。
冗談じゃなくて商談。キスショット直伝の思い出し方を使い、頭から胴体から大量の血液を使用。


気が抜けて笑ってしまう場面であるはずの「もう少しだけ、このままで」が、スクリーンでみせられると感動的な絵に映ります。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察3

○奪還
[原作 009章(143P~154P)]

 

学習塾跡へと戻った暦。忍野が持ち帰った右脚を受け取ったキスショットは、その右脚を食べることで十二歳程度の姿へと変貌を遂げる。

 

原作にあるメタ発言は全カット。ボストンバッグを片手に忍野が登場します。
キスショットの存在がそうさせるのか、ここではとてもコミカルな場面が多く、忍野が取り出した右脚を持ちながら暦と喋ってる時も、なんとかそれを奪い取ろうと頑張る姿や、魚のようにピチピチとあまりにも活きのいい描写にあわせバランスを崩してみたり、「こうするのじゃ」と丸で足を頬張り、頬が脚の形に出っ張らせてみたり、可愛らしい行動が随所に展開されます。そこに劇伴として再アレンジが施された道聴塗説も流れ、化物語では形を変えてしまったものの、懐かしくもあるこの三人の空気感を今一度体感させてくれる一幕はとても好きな瞬間です。

 

キスショットにマナー違反と怒鳴られ追い出された後、徐々に話のトーンが真剣な形へと変化し、不死力の構造について及びます。
三人が共闘して使った手法等、推測することしかできない箇所は多いですが、初めての吸血鬼バトルを体験した後の気持ちのうねり、これ程までに逸脱した存在から、本当に人間に戻れるのかという、これからの不安が溢れだす暦の姿はとても引き込まれます。
そこに優しさが込められた忍野の「こら」でそんな空気が一変。見透かしたような表情で決め台詞も飛び出しますが、この後なぜ眷属を作ったか、そもそも眷属とは吸血鬼にとってどういった存在なのか、とても重要な二人の会話が省かれているのは、今後の展開のためのものなのかとても気になりました。

 

7:20頃、部屋にはうつろな目のキスショット。見蕩れる暦をよそに軽くステップを踏み身体の調子を確認。

 

○接近
[原作 010章(154P~168P)]

 

生活用品を準備してくれる羽川を学習塾跡へと迎え入れる暦。傍らで眠っているキスショットを横目に、弾む二人の会話が心の距離を縮める。

 

4/1の夜、暦は待ち合わせた羽川と合流し、結界が張られている学習塾跡への道案内をするシーンを散りばめつつ、二人の会話は展開していきます。暦を激昂させてしまうまでに至る、その時の気持ちを話していた羽川がふと言い放つ「戻れるよ、きっと」という言葉に、不安な気持ちを共感していた私自身も鳥肌が立ってしまいました。
準備してもらった着替えを確認し、ブリーフとトランクスが出てくシーン、体格チェックのタイミングから始まるキスショットの寝言解説等で、劇場も徐々に緩い空気に包まれます。
お腹をポリポリとかくキスショットの姿は、キャラクター性と体躯とが重なりとても可愛らしく映りました。
暦の身体つきを確認した羽川に対し、照れる羽川。原作と多少話の流れが違うため、らしくない程の照れ方をみせるまではよいのですが、彼女の準備していた漫画はこれからの展開に繋がるポイントでもあるので、登場させておいた方がよいのではという感想を持ちました。

 

再び寝言を言い放つキスショット。メガネ委員長の特集を含むエロ本を物質にした表情がかなり楽しそうです。
voix、question、「えっへっへ」、「で、何これ?」。
原作にある『羽川はとても優しい、猫なで声で言った。』がスクリーンで完全再現されます。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察2

ドラマツルギー
[原作 008章(123P~141P)]

 

3/31の夜、直江津高校グラウンド。最初の学園異能バトル。
暦の吸血鬼の能力に対する誤解の為、最後まで苦戦を強いられるも、地の利を活かして勝利を収めるが、あとをつけて来ていた羽川に全てを見られてしまう。
すれ違いながらもお互いの決意を帯びた気持ちを打ち解け合い、友達として仲直りを果たす。

 

いよいよアバンシーン、ドラマツルギー戦へと繋がります。
直江津高校に結界が張られていることを伺わせるように、校門前の信号が赤となっていますが、この場所でのバトルは、直江津高校という場所の意味がかなり強い場面であり、なぜどのように決まったかといったシーンが触りだけでもない事が少し残念ではありました。
ボクサーのように構える暦に三度目の笑い。
原作とは違い蹴りで腕をもぐドラマツルギー。飛んでいく腕の効果音が間抜けで個人的には好きな場面です。元々、暦を速攻で殺しにかかっていたので腕の再生もあっという間の出来事でしたが、今作では腕のもげた身体でかなり逃げ惑います。目と反射神経の性能や、使い方に対するギャップについて特に言及はなく、また構成もクラス内バトルや、屋上での隙のつき合いなど、オリジナル要素がかなり多くなっているので、映画としてのインパクトを最優先している箇所の一つであるという印象が残ります。

 

暦による屋上での合気道技が、無情にも両腕を切断されて返された際に、腕の消失演出あり。ここも原作では手首の場面。
そこから派手に落下した暦が体育倉庫に向かうまで、ここでは思案した二人の差や、大砲というアイディアに帰結するまでの描写が無いと、なんだかよくわからないけれど読んでいた野球の本に触発され、なんだかよくわからないまま砲丸を投げる流れに見えてしまい、なんというか勝つべくして勝った印象を、ほとんど感じる事無く勝負がついてしまったように思えてなりませんでした。
supplication(嘆願)齣の上で降参するドラマツルギー。雨が上がり校門前の信号が青へと変わり、結界が解け日常が帰ってきた様子の中、吸血鬼の視力で人影を確認する暦。

 

羽川を見つける暦。ここのシーンは早朝の様な明るさではありますが、前作同様、萎れる日章旗の描写から陽がまだ出ていない事を示唆しているように思います。
バトル中に雨風でたなびいてはいましたが、その際は単純にバトルの情景を色濃くするためであり、同じ日章旗をそれぞれ別の意図で活用していると解釈しました。
本を返し、先程目の前に起こった出来事を確認した上、言い合いに。
DAKARAを強調する4体の小便小僧に四度目の笑い。ここに至るまでの空気とのギャップもあってかかなりの爆笑ポイントとなっていました。
「わかった」の後に展開される壮大な演出によって、劇場は続けざまに爆笑。
慌てふためき走り出す暦。その心を表わす言葉と行動と時間が錯綜するシーンを挟み、仲直りを果たします。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察1

傷物語Ⅱ熱血篇

 

2016/8/19劇場公開
上映時間69分

傷物語三部作の二作目

 

前作である鉄血篇が、これからの盛り上がりまで目前という、バトルが始まる寸前で終了してしまい、原作を予め読んでいた方達としては、この熱血篇までのインターバルがより長いと感じたのではないでしょうか。
本作は鉄血篇と比較すると、見るものを惹き込むため、映画館という媒体向きに特化した、よりバトルを派手に際立てる作りを目指したような印象を受けました。
当然、一時間程度でそういった作品を作り込むとなると、そのバトルにも関連する意図や会話等が大幅にカットされてしまい、ストーリーを愉しむ層に対し間口を狭める結果となり得ます。
ですが、三部作の二作目という性質上、織り込み済みの采配であり、原作や作品に対する下地がある前提で、今回繰り広げられる内容を、どこまで魅力あるものに落とし込めるかといった点に、一番重きを置いたのではないかと思います。

 

○対峙
[原作 008章(123P)]

 

本編開始直後、雨が降りしきる直江津高校のグラウンドに、傘もささず相対する暦と吸血鬼ハンターのドラマツルギー
少ない会話を終え、最初のバトルへいよいよといった緊張感が帯びた瞬間にOPへ。

 

原作ではドラマツルギーと顔を合わせ、ここに至る過程までに、日本語でなく意味不明な言葉を誤って使ってしまったり、
暦を吸血鬼ハンターの世界へ勧誘したり等、いくつかのやりとりがあります。
その中で、暦をエピソードとギロチンカッターには内緒で勧誘した際に浮き彫りになるドラマツルギーのキャラクターが、今回は後に語られるキスショットの話でのみ触れられるに留まり、いまいち強いのか弱いのかの判断ができないのではと感じました。
ドラマツルギー自身、吸血鬼ハンターとして五十三名の同胞を持ち、且つその中でも最強という立ち位置ですが、もしもキスショットの眷属である暦が仲間になれば、暦はドラマツルギーを超え更にその上の最強になれるといった内容で、二人がどういった立ち位置でどのような性質の吸血鬼なのか、またそういった吸血鬼ハンターが躍起になるキスショットという吸血鬼の存在が、どれほど強大であるのかということが表現されています。
そして、この話はキスショットを殺してくる事を条件としているので、ドラマツルギーの意図としてはハナから暦を仲間にする気などなく、単純にキスショット狩りを完遂しようとしていただけということが伺え、なかなか狡猾な一面も覗かせます。
吸血鬼ハンターであり吸血鬼でもあるドラマツルギーが、その辺りの法則を知らないとは考えにくいですから。

 

ドラマツルギーの「では始めよう。」という台詞からOPへ突入。
前作の物々しい雰囲気かた一変し、徐々に盛り上がりを見せる熱血篇を表わすかのようにテンポのいい音楽と、モールス信号やVS等が各所に入り乱れる演出。
青を基調として構成されたOPの最後、ロゴが出てくるところは本当にかっこ良かったです。

 

○拒絶
[原作 007章(102P~118P)]

 

ドラマツルギーとのバトルに向け、合気道の本などを読み備える暦。キスショットからはアドバイスらしいアドバイスを貰えず、苦心している中、偶然路上で羽川に出会う。そこでの羽川の言葉に甚く動揺した暦は、人間強度を上げるためと自分を納得させ、羽川を拒絶した後、最初のバトルの相手となるドラマツルギーの下へ向かう。

 

満月の夜、屋外で合気道と野球の本を読みふける暦。ここでは一緒に買ったクラシック音楽のおすすめリストの様な本は登場せず。
ここではどういう経緯で野球の本を読んでいるのかという説明が一切ないため、バトルでの活用時に回収される軽い伏線は、あまり重要でないとされているのが見受けられます。
キスショットの回想シーンを挟みvoix(声)齣から羽川登場。またしても差し込まれる桜のカットに、暦の頭の中が前作のアクシデントでいっぱいになっている様子が伺えます。
「駄目だよー。今日は。」と図星を突かれた際にスクラッチのワードプレイ調になってしまう暦の返答は、最初の笑いを誘っていました。
その後の会話中で飛び出す「しかもじぃーっと」の部分は、羽川の魅力が十二分に現れているポイントでしたが、この辺りで暦が影が無い事、羽川が影があることが目についていきます。


暦の腕時計で21:35分頃、一旦開いた会話の間を抜け、帰宅を促された返答として羽川が発した「吸血鬼とちょっとおしゃべりしてみたい」という内容の言葉に激昂した暦。この直前に、同じ画面で影のある羽川と影の無い暦を収めている辺りはとても解りやすい演出となっています。
この後猫と出会い、GWに怪異化してしまう程、両親に対するストレスを抱えて生きている羽川は、学校が無い時は家で居場所がなく、図書館も閉まる夜はただ気を紛らわせるための散歩をしていた時期であり、そんな中で非現実と知りつつも、吸血鬼といった上位の存在に対する憧れを抱き、この現状が少しでも変わる事になればとの思いがあるものの、暦にとっては面白半分で、自分の置かれている危機的状況を改めて突き付けられたような言葉となり、怒号となります。
ですが、この大分先の物語において、最終的には暦という半吸血鬼に、自分の状況を救ってもらうこととなるため、ここでのやり取りは先を知っていると様々な事が頭に過るシーンとなっていました。


「お前の財産が目当てだったんだ」で劇場内二度目の笑い。
距離を突き放す事を表現する画面いっぱいに左右それぞれの端で佇む二人。ここで電話帳登録を削除するのに戸惑う暦は原作になく、キャラクター性がよくでた場面になっていると思います。
原作よりも普通の女の子風に描かれる羽川が走りながらその場を後にし、暦は持っていた本を地面に叩きつけ、自分に人間強度が上がっていると頭でいい聞かせ、決意の滲み出ている猫背で最初の戦場に向かいます。

傷物語Ⅰ鉄血篇 ネタバレ感想考察6

○契約
[原作 006章(86p~102P)]

 

忍野とともに学習塾後の廃墟へと辿り着いた暦。
今作でのラストシーンである忍野との契約を交わし、専門家とのバトルへと続くシーン。

 

謎の男、忍野と暦の二人はどこかへ向かう道すがら会話を続けます。
羽川との会話場面同様、原作では留まっているのに映像では様々な個所を行き来してるという、会話劇を間延びさせないテレビシリーズでは頻繁に見かけるこの演出は引き続きですが、ここでの忍野のくわえる煙草の銘柄が、テレビシリーズで確認できた赤マルからハイライト(high-light)に変更されています。意図はないのかもしれませんが、どうにも気になりました。
また、ここで冒頭にもあった実際には存在しないヘリからの空撮シーンが挟まれますが、キスショットの待つ学習塾後のような建物が、いくつかのライトで照らされていることが確認できます。
実際は専門家三名から襲撃された直後である夜中のシーンであるにも関わらず、学習塾後へ二人が戻った頃には夕方の様な雰囲気の明かりが差しこんでいたのは、その場面でのライトであるのかもしれません。

 

学習塾後へ戻った二人はキスショットに迎え入れられ大学の教室の様な中へ。
ここで暦の目が赤目となったり黒目となったりしますが、人間としての自覚により色味が変化する構造なのか、単に光の加減なのか。

 

そのまま会話が続き、忍野の会話中に飛び出す「僕等人間は」という言葉。
この言葉で暦は忍野を少しずつ信用し始めます。重要なシーンではありますがモノローグが存在しないため、演出としては驚いた表情のみとなっています。
そしてキスショットへと話を振る忍野。「人間に戻す心意気」をかったという忍野に対し、「フンッ」と悪態をつくキスショット。前段の通り、人間に戻すという事はイコールキスショットの死を差します。ここではその決意を忍野に見破られた悔しさがさり気無くもありありと表現されていて、二人の表情も併せてとてもいいシーンではないかと思います。

 

話の途中で協力を申し出た忍野に対しての「具体的なプランを聞こうかの?」というキスショットの言葉や、改めて人間に戻れるという話を聞いた際に台詞もなく浮かべる決意の表情等、彼女の性格や心の動きをとてもうまく表現しているシーンでとても好きな場面です。

 

二人に協力する代わりに二百万円を提示する忍野。ここで出てくる万札に千円札裁判を思い出させる赤瀬川との表記があり。
借金を背負う事を決めた暦に対して、忍野の「毎度あり。なんつって。」という台詞で本編終了。

 

以上、雑感をあらすじに混ぜ込み連ねてしまいましたので、大変読みにくい文となってしまいましたが、今作で私が感じたことや考察等、ほぼほぼ込められたのではないかと思います。

 

お付き合いいただき、ありがとうございました。