感想文ブログ

作品をもう観たという方に、私の個人的な解釈を伝える為の内容を溜めます。

傷物語Ⅰ鉄血篇 ネタバレ感想考察1

傷物語Ⅰ鉄血篇

 

2016/1/8劇場公開
上映時間64分

傷物語三部作の一作目

 

この作品を鑑賞した際、テレビシリーズとは異なる様々な変更点が目につきました。
過去にテレビシリーズで登場した建物や街並みが引き継がれていないこと、黒駒、赤駒がそれぞれNOIR、ROUGEとなっている等フランス語が多用されていること、全体を包むキャラの色味、原作にある暦のモノローグがカットされている等々。
これまでのシリーズがとても好きな私は、まずこの劇場版ならではの違いを理解し、前提に置いた状態で、二回目以降の物語を楽しむところからスタートしました。

 

○炎上
[原作 004章(58P~60P)]

 

冒頭、この物語は3/26から4/7までのお話という駒から始まり、白黒反轉後、傷物語でデザインが一新された学習塾後の廃墟にそびえる大木が登場します。
3/28の16時半頃、息を切らした暦は自身の体が吸血鬼化した事に気が付かず、自らの意思で太陽の下に足を踏み入れ、炎上して一度力尽きるまでの話。

 

ここで暦に注目すると、建物内とはいえ既に彼には影が薄らとも無いことが解ります。
他に登場人物が一切でてこないシーンなので、展開を知らないとまず見逃してしまいそうです。
暦はまず建物内のどこかから最上階となる8Fへと登り、そのまま外へ出ます。
外では薄暗い天気の中、カラスが大挙して集まっており、何か嫌な事が起こる前触れを感じさせます。
原作では暦が目覚めた部屋は2F。部屋を出て少し考えた後、階段を使い1Fへと降りていくシーンなので、この時暦がなぜ一度エレベーターと階段を使って最上階へと登っていったのか不明です。
無断外泊で家を二日程留守にする事態を認識しつつ、建物を物色する余裕はないのではと感じましたが、解釈するのであれば、気が動転してといったところなのでしょうか。

 

カラスの群れから視線を受けつつ外へ出た暦は、目を劈くような太陽光に眼球を傷つけられる様に見えるシーン。
曇天から漏れる光が僅かであるため、再生能力を持つ暦は気付かず眩しいなと感じるに留まります。
そして実際には飛んでいないヘリのプロペラ音と共に、空撮アングルのカメラから捉えられる暦。
そこからシーンは切り替わり、たなびく日本国旗が画面いっぱいに映し出されます。
この日本国旗の質感や雰囲気など、不穏な怪しさの表現され方がとても好きです。
またこの日の丸が、直後に起こる吸血鬼の天敵、太陽の出現を示唆しているのでしょう。

 

不吉な無数のカラスが目につく中、外の階段を降りる暦ですが、ここでもなぜその階段を降りようと思ったか、私にはいまいち見えてきませんでした。
一旦「大まかな現在地を把握するために外の様子を伺うため」という解釈でこの場面を理解します。
ただこの階段を降りる際の辺りを警戒する様な暦の表情は、今作一のかっこ良さではないでしょうか。

 

階段を降り切り、おもむろに上空を見上げる暦。
薄くなっていく雲の隙間から太陽の光が漏れ、吸血鬼である暦の身体は燃え上がります。
熱さに耐えきれない暦は無数のカラスの群れが羽を休めている中をもがき苦しみながら駆け抜けますが、すし詰めとなったカラスにより、黒いカーペットと化した場所を、炎上している暦が通った箇所のみ、カラスが逃げたことによって色を変えていくシーンはとても引き込まれました。
そのまま建物から飛び降り、吹き飛ばされながら道に倒れ込む暦。
飛ばされ転がっていく暦を画面が追い越してしまい、置いて行かれた暦の右手だけがフレームに映る瞬間もとてもよかったと思いますし、そのまま太陽光線に焼かれつつも再生し続けているという、アニメで表現するには一筋縄でいかなそうな点を、目の色で表わしていたところもいいなと思いました。

悠然とただそこにある国旗のアップ。この時既に晴れた青空の下にあるはずなのにどこか怪しいです。

そしてタイトルが出た後、物々しいOPへと画面は移ります。