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感想文ブログ

作品をもう観たという方に、私の個人的な解釈を伝える為の内容を溜めます。

傷物語Ⅱ熱血篇 ネタバレ感想考察1

傷物語Ⅱ熱血篇

 

2016/8/19劇場公開
上映時間69分

傷物語三部作の二作目

 

前作である鉄血篇が、これからの盛り上がりまで目前という、バトルが始まる寸前で終了してしまい、原作を予め読んでいた方達としては、この熱血篇までのインターバルがより長いと感じたのではないでしょうか。
本作は鉄血篇と比較すると、見るものを惹き込むため、映画館という媒体向きに特化した、よりバトルを派手に際立てる作りを目指したような印象を受けました。
当然、一時間程度でそういった作品を作り込むとなると、そのバトルにも関連する意図や会話等が大幅にカットされてしまい、ストーリーを愉しむ層に対し間口を狭める結果となり得ます。
ですが、三部作の二作目という性質上、織り込み済みの采配であり、原作や作品に対する下地がある前提で、今回繰り広げられる内容を、どこまで魅力あるものに落とし込めるかといった点に、一番重きを置いたのではないかと思います。

 

○対峙
[原作 008章(123P)]

 

本編開始直後、雨が降りしきる直江津高校のグラウンドに、傘もささず相対する暦と吸血鬼ハンターのドラマツルギー
少ない会話を終え、最初のバトルへいよいよといった緊張感が帯びた瞬間にOPへ。

 

原作ではドラマツルギーと顔を合わせ、ここに至る過程までに、日本語でなく意味不明な言葉を誤って使ってしまったり、
暦を吸血鬼ハンターの世界へ勧誘したり等、いくつかのやりとりがあります。
その中で、暦をエピソードとギロチンカッターには内緒で勧誘した際に浮き彫りになるドラマツルギーのキャラクターが、今回は後に語られるキスショットの話でのみ触れられるに留まり、いまいち強いのか弱いのかの判断ができないのではと感じました。
ドラマツルギー自身、吸血鬼ハンターとして五十三名の同胞を持ち、且つその中でも最強という立ち位置ですが、もしもキスショットの眷属である暦が仲間になれば、暦はドラマツルギーを超え更にその上の最強になれるといった内容で、二人がどういった立ち位置でどのような性質の吸血鬼なのか、またそういった吸血鬼ハンターが躍起になるキスショットという吸血鬼の存在が、どれほど強大であるのかということが表現されています。
そして、この話はキスショットを殺してくる事を条件としているので、ドラマツルギーの意図としてはハナから暦を仲間にする気などなく、単純にキスショット狩りを完遂しようとしていただけということが伺え、なかなか狡猾な一面も覗かせます。
吸血鬼ハンターであり吸血鬼でもあるドラマツルギーが、その辺りの法則を知らないとは考えにくいですから。

 

ドラマツルギーの「では始めよう。」という台詞からOPへ突入。
前作の物々しい雰囲気かた一変し、徐々に盛り上がりを見せる熱血篇を表わすかのようにテンポのいい音楽と、モールス信号やVS等が各所に入り乱れる演出。
青を基調として構成されたOPの最後、ロゴが出てくるところは本当にかっこ良かったです。

 

○拒絶
[原作 007章(102P~118P)]

 

ドラマツルギーとのバトルに向け、合気道の本などを読み備える暦。キスショットからはアドバイスらしいアドバイスを貰えず、苦心している中、偶然路上で羽川に出会う。そこでの羽川の言葉に甚く動揺した暦は、人間強度を上げるためと自分を納得させ、羽川を拒絶した後、最初のバトルの相手となるドラマツルギーの下へ向かう。

 

満月の夜、屋外で合気道と野球の本を読みふける暦。ここでは一緒に買ったクラシック音楽のおすすめリストの様な本は登場せず。
ここではどういう経緯で野球の本を読んでいるのかという説明が一切ないため、バトルでの活用時に回収される軽い伏線は、あまり重要でないとされているのが見受けられます。
キスショットの回想シーンを挟みvoix(声)齣から羽川登場。またしても差し込まれる桜のカットに、暦の頭の中が前作のアクシデントでいっぱいになっている様子が伺えます。
「駄目だよー。今日は。」と図星を突かれた際にスクラッチのワードプレイ調になってしまう暦の返答は、最初の笑いを誘っていました。
その後の会話中で飛び出す「しかもじぃーっと」の部分は、羽川の魅力が十二分に現れているポイントでしたが、この辺りで暦が影が無い事、羽川が影があることが目についていきます。


暦の腕時計で21:35分頃、一旦開いた会話の間を抜け、帰宅を促された返答として羽川が発した「吸血鬼とちょっとおしゃべりしてみたい」という内容の言葉に激昂した暦。この直前に、同じ画面で影のある羽川と影の無い暦を収めている辺りはとても解りやすい演出となっています。
この後猫と出会い、GWに怪異化してしまう程、両親に対するストレスを抱えて生きている羽川は、学校が無い時は家で居場所がなく、図書館も閉まる夜はただ気を紛らわせるための散歩をしていた時期であり、そんな中で非現実と知りつつも、吸血鬼といった上位の存在に対する憧れを抱き、この現状が少しでも変わる事になればとの思いがあるものの、暦にとっては面白半分で、自分の置かれている危機的状況を改めて突き付けられたような言葉となり、怒号となります。
ですが、この大分先の物語において、最終的には暦という半吸血鬼に、自分の状況を救ってもらうこととなるため、ここでのやり取りは先を知っていると様々な事が頭に過るシーンとなっていました。


「お前の財産が目当てだったんだ」で劇場内二度目の笑い。
距離を突き放す事を表現する画面いっぱいに左右それぞれの端で佇む二人。ここで電話帳登録を削除するのに戸惑う暦は原作になく、キャラクター性がよくでた場面になっていると思います。
原作よりも普通の女の子風に描かれる羽川が走りながらその場を後にし、暦は持っていた本を地面に叩きつけ、自分に人間強度が上がっていると頭でいい聞かせ、決意の滲み出ている猫背で最初の戦場に向かいます。