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感想文ブログ

作品をもう観たという方に、私の個人的な解釈を伝える為の内容を溜めます。

傷物語Ⅲ冷血篇 ネタバレ感想考察2

○本質
[原作 015章(245P~267P)]

 

完全体となったキスショットは暦を人間に戻す事となるが、その前にと暦との打ち上げ代わりのお喋りが始まる。どこか寂しい印象の思い出話を終え、いよいよという時に名残惜しむ暦が提案した送別会。吸血鬼最後の日を盛大に楽しもうとした矢先、唐突にこれまで目を瞑っていた吸血鬼の本質と遭遇することとなる。

 

山のように積まれた白い羽の上を転がりまわってはしゃぐ完全体キスショット。「っていうかどうでもいい!」と言ってのけるキスショットは愉快そのもの。
直後に暦から人間に戻すようお願いされますが、それまでに二時間はしゃいでいるのですから、つい笑ってしまいます。
その言葉を機に、キスショットのテンションが変わります。

暦を人間に戻すこと、即ち自らの命を絶つこと。後に語られる一人目の眷属の願いを聞く事ができず、死んでやることができなかった後悔の気持ちが消えないまま、そんな一人目の眷属に思いを馳せ死に場所にと選んだ日本で、作ってしまった二人目の眷属である暦のために死を選ぶ事。
自らの生、そして自分を救ってくれた暦との時間を名残惜しむような気持ちが、暦を屋上へ誘う際の目を逸らす表情に表れているように見えました。
「退屈な500年」という人生(吸血鬼生)の中で第一に語る一人目の眷属の話。ここから物語シリーズではお馴染みのウエダハジメ氏による古傷物語が始まります。シーンとして単調になり得る会話シーンの中で展開される特徴的なタッチが続くスクリーンは、これまでのシリーズを観ている方にとって、とても物語らしいパートになっていると思います。
妖刀心渡を腹から取り出すキスショットを前に唖然とし伸びている暦の姿で笑わされます。
ここで心渡の怪異殺しとされる話がカットされているので、後のシリーズとの繋がりを考えると残念な部分ではあります。
そして、水しぶきが舞いライトアップされる幻想的な雰囲気の中、二人の楽しそうな会話が続いて行きます。結末を知った上でこのシーンを観ていると、暦の目は何も分かっていない目を、キスショットは決意の様な目をしているのが、後のすれ違いを予感させます。
いよいよとなった時、今までお腹は空かないと言っていた暦から小腹が空いたとの言葉。忍野の知識でのそろそろが正に去来している時、キスショットの言う「携帯食」がすれ違いをみせます。

近所のセブンイレブンで買い物を済ませ帰路につく暦。自分が見ない様にしていた側面を無視した都合のいい考えで満ちる頭の中。暦の空想の中、成長するキスショットの姿が屈託ない表情を見せ、「僕にとってはそんな悪くない春休みだったのかもしれない。」というモノローグが痛々しいとすら思えます。
鉄血篇でもみられた、何か大きい事の前触れともとれる左回りの螺旋階段。
二階の教室では、あんなに可愛らしく美しかった空想の中のキスショットは存在せず、吸血鬼として当然の捕食活動をありのまま行う怪異の王の姿がありました。