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感想文ブログ

作品をもう観たという方に、私の個人的な解釈を伝える為の内容を溜めます。

傷物語Ⅲ冷血篇 ネタバレ感想考察5

○最終決戦
[原作 017章(309P~328P)]

 

全戦闘の中でも最も凄惨且つ派手な主人と従僕の殺し合い。暦を人間に戻す機会を逸したため、死ぬ前に出会えた二人目の眷属にする事さえ厭わなかった面白き人間のために暦に自らを殺させようとする主人と、これ以上人間を喰わせないため、自らが人間へと戻るためにキスショットを殺そうとする従僕のすれ違いから生じた戦いは激戦となるが、突然の羽川乱入により事態は進展して行く。

 

VS キスショット アセロラオリオン ハートアンダーブレード。時折架空のヘリ空撮視点が交わりながら競技場と化した直江津高校グラウンドで相対する主人と従僕。暦がここで言う「美しくあっても正しくはなかった」という言葉には、暦の視点からこの物語はどんな物語であったかを端的に表わす作品中でもとても象徴的なものではないでしょうか。これまでにその身を変化させてきた各年齢の姿のキスショットが、一人ずつ偽善者というレッテルを暦に貼っていく劇場版オリジナルの演出は、暦という人間がどのように罪な存在であるかを次々と叩きつけられるようでとてもいいシーンだと思いました。
原作にあったこの戦いでのルール設定については、最後に明らかになるキスショットの真意を汲めば蛇足ともとれる内容のため、カットされてもやむなしといったところでしょうか。


お互いの気持ちを言葉上で確認した後、開戦。両者身体の部位を紙切れの如くこれでもかと断裁していきます。原作では基本的に手刀で殺し合う中、会話を織り交ぜ羽川の乱入を迎えるのですが、流石は三部作最後の山であり見せ場。首は飛び散るは、オーバーな体術が繰り出されるは、空中戦があったかと思えばキスショットの見たこともない必殺技のような飛び道具が放たれたりと派手なアクションが満載。偽物語で繰り広げられた火憐との兄妹喧嘩をも超えるスケールとなっており、どんどんとスクリーンに引き込まれていきます。殺し合い中にも関わらず、冗談をも編み込まれた会話を交わす原作も捨てがたいですが、要所要所で差し込まれる残存した会話の中にも、「いや、久しく忘れておったというだけじゃ」と独り言のように喋るキスショットのクールさなど、原作よりも強い印象を残す箇所があり見応えのあるシーンになっているのではないかと思います。


突然の羽川の乱入に隙を見せたキスショット。その隙を見逃さなかった暦。弾け飛んだ身体と切り離され頭だけになった暦の牙がキスショットの首元を確実に捕え、キスショットのエナジーを急速に吸い上げ老婆の様な姿に変貌を遂げるキスショット。自分の望みとは少し違いはしたものの、ほぼ想定内の展開で殺されようとするキスショットは、暦に血を急激に吸われつつも高らかに笑い続ける。